2016/01/09

Storenをブルージェイズにトレード (Ben Revereを獲得)

遂にこの日が来ました。

長らく噂され、昨夏のあのトレード以降は時間の問題と言われていたDrew Storenのトレード退団が決定。

Storenの行き先はブルージェイズで、ナショナルズはBen Revere外野手とPTBNL(現時点では全く不明ですが、StorenとRevereとの年俸差額をナショナルズが負担していることから、重要なピースではないと見られています)を獲得することになりました。なお、2人とも年俸調停対象期間中で、Storenが残り1年、Revereは2年です。

評価を先に書いてしまうと、「全ての関係者がハッピーないい形でのトレード」だと思いました。ここまで至った経緯には非常に大きな不満がありますが、それでもこのトレードをまとめたことについては、Mike Rizzo GMを評価していいと思います。

まず、獲得したRevereについて書きます。

Ben Revere (2015 season for PHI and TOR)
152G 634PA 84R 2HR 45RBI  32BB 64K .306/.342/.377 31SB 

先に書いておくと、2015年までナショナルズで活躍したDenard Spanと驚くほどに似ているというか、何かと縁があります。驚きます。まず、選手としての特徴ですが、俊足巧打の左打ちの外野手で外野守備力がかなり高く評価されています。同じですね。元々ドラフト1順目でツインズに入団したことも同じ(Spanは2002年の全体20位、Revereは2007年の全体28位)。Revereは2010年にメジャーデビューしましたが、2011年にセンターのレギュラーとして定着したのは、SpanがDL入りしたことによるものでした。2012年には復帰してきたSpanがセンター、Revereはライトでともにプレー。そのオフ、Spanがナショナルズにトレードされ、ツインズのセンターはRevereが収まるかと思われましたが、ほぼおなじタイミングで、Revereもフィリーズへトレードされました。2013年は故障で88試合の出場にとどまりましたが、ほぼフル出場した2014年シーズンには184安打を記録し、Spanと並んで(!)ナ・リーグトップタイでした。そして2015年シーズンもフィリーズで開幕から活躍し、夏にブルージェイズにトレードされ、ポストシーズンでも全11試合で1番レフトでフル出場しました。そして今回、Spanのジャイアンツとの3年契約が成立した今日、このトレードが発表されました。

ナショナルズでは、Spanが務めていた1番センターを埋めることが想定されています。これにより、Michael Taylorがレギュラーから外れることが想定されますが、いずれもあくまで現時点での「想定」。レフトのレギュラーと想定されているJayson Werthが故障離脱する可能性もあり、そもそも攻守における能力低下によりWerthがベンチに下がらざるを得なくなることも考えられますので、結果的にTaylorの出場機会はかなりあるのではないかと思われます。

Storenについては、今さらいろいろ書くまでもないと思いますが、簡単におさらいしておきます。

Drew Storen (for Nationals)
[Carrier] 355G(21W-13L-95SV-72HD) 334.0IP 321K 96BB 3.02/1.129  
[2015 Season] 58G(2W-2L-29SV-5HD) 55.0IP 67K 16BB 3.44/1.109

2009年のドラフト1順目(全体10位)。全体1位のStephen Strasburgに続く、チームとしては2人目の指名選手でしたが、そもそもこの指名権は、前年ドラフトの全体9位で指名した某選手と契約できなかったための補償ピックでさらなる補償は認められないこと、指名の直後に契約に合意したことなどから、契約可能性を考慮した指名で能力的にはオーバードラフトとの見方もありました(私も含め)。しかし、こうした見方を望ましい方向で裏切り、結果的には全体10位指名に十分値するキャリアを積んできたと言えるでしょう。

6月にドラフト指名を受けて直ぐに契約すると、Aでプロデビューし、その年のうちにAAまで昇格。アリゾナ秋季リーグでも活躍し、翌2010年の5月にメジャーデビュー。これは翌月に衝撃的なデビューを果たすStrasburgの先を越す快挙でした。その年の7月末にトレードされたMatt Cappsの後を受けてクローザーとして起用されると、8月6日にはメジャー初セーブ。そして、2011年は、春先こそ出遅れたものの最終的には自己最多の43セーブを記録。これでチームのクローザーとして当分は安泰かと思われましたが、2012年のスプリングトレーニング中に右ひじ痛を発症し、手術に踏み切りました。それでも7月には復帰し、レギュラーシーズン終盤にかけて調子を上げてチームの初の地区優勝に貢献。カージナルスとのNLDSでも、第1戦は1点差を守りセーブを記録、第4戦でも同点で迎えた9回表を無失点で終え、その裏のWerthのサヨナラ弾を呼び込みました(この試合の勝ち投手)。

そして、おそらくはStorenのその後の運命を変えることになったNLDS第5戦を迎えました。たらればを言っても仕方ないことはもちろん分かっていますが、あの回を、Yadier MolinaかDavid Freeseのどちらかを抑えていたらと思わずに入られません。そのオフのRafael Sorianoの補強によるクローザーからの降格もなかったでしょうし、その後のキャリアは全く違ったものになったはずです。

翌2013年1月、球団はSorianoと2年契約。これにより、Storenはセットアッパーに逆戻りとなっただけでなく、完全に自分を見失い、7月末にはAAA行きを命じられるほどのどん底まで落ち込みました。この時のいきさつ、特にともに長年ナショナルズのブルペンを支えた僚友Tyler Clippardのコメントなどは忘れられない思い出の1つです

不本意に行かされたマイナーでしたが、その2週間でまさかの完全復活。2013年の8月以降、そして2014年と、相変わらずSorianoのセットアッパーという役回りでしたが、素晴らしい仕事を続け(2014年シーズンの防御率は1.12という驚異的な数字)、遂に9月には不振のSorianoからクローザーの地位を奪還。このままの勢いでポストシーズンもクローザーとして突入しました。

が、ジャイアンツとのNLDS第2戦で悪夢が再びやってきました。Williams監督の采配の犠牲になった面が大きいという説もあります(私もこれに与します)が、結果的には、これで決定的にフロントの信頼を失ったようです。オフに新たなクローザーが連れてこられることもなく、クローザーとして迎えた2015年シーズンは開幕から絶好調で、「あの日」までの31回のセーブ機会のうち29回で成功。防御率1.73と抑え込んでいました。「あの日」、7月28日の動きによって、フロントがStorenを信頼していなかったことが明らかとなりました。以降は20試合に登板して、防御率6.75。最後は、打ち込まれた後のロッカーで荒れて負傷してシーズン終了。そんな形なのに、Storenを責める気には全くなれませんでした。

簡単におさらいと言いながら随分長くなりました。これほどドラマチックなキャリアもなかなかありませんので、どうしてもこうなってしまいました。

さて、Storenが行くことになるブルージェイズですが、まず嬉しいのは、2016年に優勝を目指すチームであることです。2015年シーズンはメジャー最強打線(総得点891点は2位ヤンキースを127得点も上回る)を擁してア・リーグ東地区を制し、1993年以来のポストシーズンに進出。ALCSでWSを制することになるロイヤルズに敗れはしたものの、打撃陣はほぼそのまま残っており、2016年はWSを狙っているはずです。気になるブルペン事情は、21歳にまもなくなるという若いRoberto Osunaがルーキーながらシーズン後半にクローザーとしての地位を確立しており、Storenはひとまずセットアッパーとして起用されるものと見られます。とはいえ、Osunaは、AAも経験せずにいきなりメジャーに放り込まれ、昨年のALCSでは最終第6戦の8回裏に決勝点を失うなど大事なところで打たれており(ポストシーズンで打たれたからこそOsunaを応援したくもなるのですが・・・)、その地位には一定の脆弱性があると考えられ、Storenにもクローザーの機会が巡ってくるかもしれません。

心機一転。FA前の最後のシーズンをしっかり送ってくれることでしょう。

我らがナショナルズのクローザー、Drew Storen。これまで、本当にありがとう。幸運を祈ります。是非、ワールドシリーズで対戦しましょう!

(追記・修正するかもしれませんが、ひとまず。)

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